濱野智史の「情報環境研究ノート」

アーキテクチャ=情報環境、スタディ=研究。新進気鋭の若手研究者が、情報社会のエッジを読み解く。

第10回 セカンドライフが「閑散としている」のはなぜか? 1

2007年8月 2日

――「真性同期型アーキテクチャ」としてのセカンドライフ

■10-1.過熱する「セカンドライフ」を巡る報道と、閑散とする「セカンドライフ」の実態

今回は「セカンドライフ(Second Life)」について分析してみたいと思います。すでにご存知の方も多いと思いますが、セカンドライフはこの7月にようやく日本語版が公開され、それに伴い日本企業のメタバース進出も相次いでおり、メディア上では、「日本でもセカンドライフはこれから本格的に盛り上がる」というムードが醸成されているようです。しかし、かたやネット上の言説を見遣れば、セカンドライフは「もうすでに死んでいる」とでもいわんばかりの論調が大半となっています。その論拠は様々ですが、その最も強い根拠として挙がっているのは、セカンドライフの実態は「閑散としている」という認識です。

セカンドライフが「閑散している」という事実は、様々な形で伝えられています。運営元のLindenLab自身が公表している統計データによれば、この数ヶ月でアカウント登録数は急激に増えているものの、アクティブ・ユーザーの比率や常時ログイン利用者の数はかなり少ないということが判明しています(メディア・パブ)。また、すでに米国でも、セカンドライフに進出した企業が次々と撤退を始めていると伝えられており、その根拠もやはり「利用者の反応が乏しかったから」というものが挙げられています(米Los Angels Timesの記事と、その紹介:シロクマ日報)。実際、セカンドライフをひとまず体験したことのある方であれば、いわゆる「企業スペース」は閑散している一方、ポルノ系の場所に数多くの人が集まっているという実態を目の当たりにした方も多いのではないかと思いますし、スクリーンキャプチャ付でその実態を伝えるブログも少なくありません。

そのためここ最近は、一般メディア上では連日セカンドライフ・ブームが伝えられるのに対し、ネット上ではそれが空騒ぎに過ぎないことを指摘する、という対立の構図が定着しています(その構図の一例として、爆発するソーシャルメディア: 「セカンドライフ、来るの?来ないの?」)。後者(ネット側)のおおよその主張を要約すれば、「セカンドライフ・ブームは、ユーザーの利用という実体を伴っておらず、メディアや広告代理店が過剰に盛り上げている《空虚なバブル現象》に過ぎない」というわけです。ある記事では、この事態をいささか「エレガントに」(もちろん皮肉ですが)、「企業参入のパブリシティ効果はあるが集客がない」――「新しいことをやっている」とアピールすることでメディアには取り上げられるが、実際にはお客さんは来ない――と、みもふたもない形で表現しています(INTERNET Watch)。

実際問題として、まだ(7月末現在)日本語版公開以降の「日本人ユーザー数」の伸びは発表されていませんので、当分のところは「本当にセカンドライフは日本ユーザーの間に定着するのか、それともただのバブルで終わるのか」は様子見というのが、現時点での大方の認識ではないかと思います。――むしろ日本語版の公開によって、いよいよ「閑散としているのは日本語版が出ていなかったから」という言い訳ができなくなるだろう、という辛辣な見解も出されてはいますが(キャズムを超えろ)。

(2)に続く

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プロフィール

1980年生まれ。株式会社日本技芸リサーチャー。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。専門は情報社会論。2006年までGLOCOM研究員として、「ised@glocom:情報社会の倫理と設計についての学際的研究」スタッフを勤める。

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