IPTVビジネスはどのようにデザインされるか

2008年9月より開催中のワイアードビジョン主催・IPTVセミナーの速報レポート。

スポーツ映像のシーンメタによるコミュニティ型視聴の可能性:難波田哲史(テクノネットグループ株式会社取締役)

2009年3月23日

第6回:IPTV時代のコンテンツ編成とコミュニティモデル/CGM型との融合(2月20日(金)開催)より。(4/4)
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難波田哲史(テクノネットグループ株式会社取締役)

スポーツ映像には、高ロイヤリティな視聴コミュニティの可能性がある

日本の地上波テレビは、映像系ソフト制作費の77%を占めており、映像コンテンツに新たなサービスを付加することで、ロイヤリティの高い視聴コミュニティを作ることが課題になっている。

スポーツは、潜在的にコアな視聴者コミュニティを内包している。また、競技が行われているのと同時に発生するライブ、ダイジェストやトピックスをとりあげるニアライブ、分析と視点の転換を行う事後といったコンテンツニーズが時間の経過に伴い発生する。さらに、実際に競技が行われている場がテレビ番組とは別に存在しており、現実に可能な多様な観戦の支店が存在する。

また、映像の利用権利は各スポーツ団体が一括して管理していることが多く、比較的処理しやすく広がりがある。

情報高度化による新たな利用者満足の可能性

映像と同時に、さまざまな情報が記録されている。例えば駅伝競技の場合、選手自身に取り付けられたチップによる位置情報や記録、中継車による天候データと走行距離などのデータが自動取得できる。だが、応援チームの位置情報や動きをリアルタイムで把握することは難しく、番組内では中継車からの通過時の映像で遠景を押さえるのが精一杯であることが多い。

また、収録はされていても、番組枠に収まらず、放送されない多くの映像がある。例えばゴルフであれば20〜30台のカメラを設置して18ホールの映像を撮影している。10本のスイッチングアウトでも100時間程度の映像にはなっており、カメラに記録された映像の合計は、300〜400時間に上る。だが実際の番組の時間は長くて2〜3時間程度であり、放送されるのは一部の選手の4〜6ホール程度にしかすぎない。

現在のテレビ番組では、競技映像に情報をCG合成して表示する、データ放送やワンセグによる情報提供、ネット・モバイルによる速報サービス等の連動サービスなどが提供されている。取得できる情報をキーにした映像検索やカメラの切り替えによる選択視聴などの高度なサービスを提供することで、例えば「駅伝で応援しているチームの監督や応援団の映像を見たい」「ゴルフで、お気に入りの選手の全ホールの映像を見たい」といった選択的視聴ニーズに応え、さらに利用者の満足を引き出せる可能性がある。

こうしたサービスを実現するためには、素材となる映像やデータを統合し、さまざまな形で提供するメディア制作フローの統合と、コンテンツメタ情報システムの統合が必要になる。統合メタデータ作成の試みが、2008年夏の北京オリンピック中継で行われた。11,000名という膨大な選手名の日本語表記をジャパンコンソーシアムが中心となり、NHK国際放送局、翻訳業者、各国大使館が協力して統一表記を決定した。データ放送やネットにより、テレビ番組では紹介されない選手についても報じられるため、氏名の表記統一は重要な課題であり、有意義な取り組みだったといえる。

ライブメタデータ作成システムの試み

選択的視聴ニーズに応えるためには、番組だけをターゲットにするのではなく、収録する素材自体をデジタル化して保存し、シーンごとにメタデータを付与する必要がある。速報性が求められる生放送やニアライブにも対応するためには、シーンメタ情報を現場で入力する仕組みが必要になる。

テクノネットでは、アイスホッケーを題材に、生放送用のシーンメタ情報入力UIとビューワーを実験的に開発した。1人のオペレーターが、1試合あたり1000件程度のシーンメタ情報を入力することができた。入力した情報は、エポック(ゴール、シュートシーン)・ゲーム展開情報(プレイゾーン、選手情報)などで階層化されており、パワープレイのゴールシーン、といった形で見ることができる。

競技スタッツ(統計記録)は、得点状況を記録しているが、シーンメタを利用しなくても得点につながらなくても重要なシーンを抽出できる。「ナイスプレー」を抽出することができるので、視聴者から見るとブックマークポイントになる。ゲーム展開によりエポックシーンを抽出することもできる。

ビューワー側では、シーンメタ情報にあわせて、カメラの映像を切り替え、好みの視点でゲームを見るといった活用が考えられる。生放送では引きの映像を使いがちだが、いいシーンは逆側からのアップ映像を見たいといったニーズに応えられる。

今後は、中継車と入力UIをセットにした制作ユニットをまとめて、シーンメタ情報をとりこんだ制作フローを機動的に運用できるよう確立していきたい。また、広告の観点からは、シーンメタ情報でユーザーのポイントするシーンにあわせて、グラフィック情報内にスポンサーシップを表示する機能が必要になるかもしれない。

シーンメタ情報そのものをソーシャルタグと組み合わせることで、新たな楽しみ方が広がる可能性もある。現在の入力システムはWebベースで作っているので、視聴者に公開することで、放送を見ながら視聴者自身でタグを入力し、コミュニティで共有するといった新たな可能性も考えられる。

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