マイケル・カネロスの「海外グリーンテック事情」

テクノロジー、ビジネス、公共政策の三要素が交差するグリーンテック領域の動向を伝える

ソーラー・プレーンで世界一周に挑戦--軽量な機体と自己催眠が成功のカギ

2010年1月22日

アブダビ(アラブ首長国連邦)--ソーラー・プレーンで世界一周の旅を成功させるカギは、自己催眠と軽量な機体の設計にある。

ソーラー・インパルス(Solar Impulse)という会社の社長で、飛行機のパイロットでもあるベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)が、ソーラーパネルで発電し、バッテリーに蓄えた電気を動力源とする飛行機を操縦して、ノンストップで世界を一周する空の旅に挑戦しようとしている。2012年か2013年に予定されるこの挑戦の目的は、新しい空の旅のあり方があることを世界の人々に証明してみせることにあると、同氏は当地で今週開催されている「ワールドフューチャー・エナジーサミット(World Future Energy Summit)」に集まった参加者を前にしてそう語った。

ピカールとぼ、彼のパートナーであるアンドレ・ボルシュベール(Andre Borschberg)は、これまでに数多のコンピュータ・シミュレーションを繰り返し、この類の飛行機がさまざまな環境下でどういう振る舞いをみせるかについての情報を集め、また実機よりわずかにスケールダウンした実験機もつくってみた。そして、この実験機がうまく空を飛べることを確かめた。2人は年内に、この飛行機を高度2万7000フィートまでとばし、また夜間飛行も試みることにしている。

その後、2人はこの飛行機の後継機をつくり、それで大西洋横断飛行に挑戦するつもりだという。

「テスト飛行が成功すれば、このソーラー・プレーンで日中でも夜間でも飛行可能なことが証明される」とピカール。「これはわれわれがどんなことを達成できるかを示すデモンストレーションであり、パイオニア精神を示すシンボルでもある。21世紀の冒険は省エネ分野にある」

もしすべてが計画通り運べば、その後2人はさらに大型のソーラー・プレーンをつくって、今度は単独操縦での世界一周飛行が待っている。ちなみに、2人は7年前からこのプロジェクトを進めているという。

構造と仕組みについて
この最終版のソーラープレーンは小型の商用ジェット機と同程度の大きさになるが、ただし自転車のように軽い。両翼の端から端までの長さは64メートルで、翼の幅はエアバス社の製造するジェット機と同程度になるが、重量はわずか1.6トンにしかならない(これは小型乗用車とほぼ同じ重さ)。別の見方をすると、この飛行機は1平方メーターあたり約8キログラムの乗員・荷物しか搭載できないが、それに対して通常のジェット機の積載重量(1平方メーターあたり)は数千キロだとピカールは説明した。

「積載可能重量を20キログラム増やそうとすると、翼を1メートル長くする必要がある」(ピカール)

この飛行機には4基のモーターが積まれ、それがプロペラを回転される仕組み。そしてモーターを動かす電力は翼の上に搭載されたソーラーパネルから供給される。このソーラーパネルは日中に飛行機を動かし、同時にリチウムイオン・バッテリーに充電できるだけの発電能力、つまり表面積がなくてはならない。そうでなければ夜間飛行ができないからだ。機体の設計者らは夜間のバッテリー充電用にガソリンで動かす発電機の搭載も考えたが、しかしピカールは、どうせ機体の重量が増えるなら発電機よりも同じ重さのバッテリーを積んで蓄電容量を増やしたほうがいいと語った。

この最終モデルの搭載可能重量は160キログラムになる予定で、それならパイロット1人にパラシュート、救命ボート、水、食料、酸素を積んでも問題なく飛行できる。


乗員の食料と睡眠は?
ところで、この飛行機を操縦する人間の食べ物はどうするのだろうか。この点については、短距離のフライトや大西洋横断くらいならパイロット1人で対応できてしまうので、そのパイロットが繊維質の多い食べ物を控えて、トイレに行かなくても済むようにすれば大丈夫だという。また世界一周など長距離飛行の場合は「ドライパスタのような」(ピカール)エネルギー量の多い料理がメニューに載ることになるという。

また、睡眠についてはパイロットが自己催眠をかけて、4時間ごとに20分程度の仮眠状態になることで対応できるという。そういうピカールは、実のところ有名な自己催眠のエキスパートで、1999年には史上初めて気球での世界一周旅行を果たしている。

このソーラー・プレーンは簡単に操縦できるものではない。飛行中には相当量の慣性が働くので、操縦桿を動かしても即座に方向転換することは難しい。むしろヨットのような帆船の操縦に近く、パイロットは舵をきってから機体が向きを変えるまで、しばらく待たなくてはならない。

「この飛行機のシミュレーションでは、(従来型飛行機の)操縦がうまいパイロットが墜落してしまう」(ピカール)

そんな飛行機での世界一周にそれでも挑戦する理由はなにか。この疑問の答えは、リンドバーグが教えてくれる。同時代の人間たちは彼の正気を疑っていたが、しかし彼が大西洋横断飛行を成し遂げてからそう経たずに旅客機が大流行したのだ。


[著者:Michale Kanellos(Greentech Media)/抄訳:坂和敏/原文公開:1月20日(米国時間)]

原文はこちら:
"Around the World in a Solar Airplane"

訳者コメント:
ソーラーカーの開発やレースはだいぶ前から行われていますし、船についてもしばらく前に双胴船の計画があることをお知らせしましたが、今度は「空の旅」への挑戦、というお話。「ソーラーインパルス」で検索してみたところ、すでに多くの情報がウェブにありました。同プロジェクトのウェブサイト(下記参照)にはテストの模様を撮影した動画がたくさんあります。ちなみにスポンサーとしてオメガ(時計メーカー)とドイツ銀行が支援しているようです。

関連エントリ−&情報:
Solar Impulse - Around The World In A Solar Airplane(プロジェクトのサイト)
・「プラネットソーラー・プロジェクト、太陽光発電で動く双胴船で世界一周へ

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プロフィール

米グリーンテック・メディア社(Greentech Media)編集長。CES(米国コンスーマー・エレクトロニクス・ショー)をはじめ、スタンフォード・イノベーション・ジャーナリズム・サミットやクリーン・エネルギー・ベンチャー・サミットなど多くの会議や協議会で講演、ナショナル・パブリックラジオ(NPR)やCBSのザ・アーリーショー、CNBCなどのテレビ番組にも多く出演中。2005年には、ソサエティー・オブ・プロフェッショナル・ジャーナリスト(米国最古のジャーナリスト協会)から全米オンライン特集記事賞を受賞。

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