長い沈黙を破ったブルーム・エナジー、ついに燃料電池の製品発表へ
2010年2月24日
(これまでの マイケル・カネロスの「海外グリーンテック事情」はこちら)
ほぼ10年に近い時間と巨額の資金を注ぎ込んで、これまでずっと"スティルスモード"で開発を続けていた燃料電池開発の新興企業ブルーム・エナジー(Bloom Energy)。そんな同社が、CBSの報道番組「60ミニッツ」("60 Minutes")ではじめて「ブルーム・ボックス」("Bloom Box")と呼ぶ製品をお披露目しました。
グリーンテック関連の英語有力ブログはここ何日かこの話題で持ちきりといった感もあり、たとえばGreentech Mediaではブルーム・エナジー関連の長い記事を合わせて4本も掲載し(もっとも、これには編集長のマイケル・カネロスが番組中に登場したという我田引水的な理由もあるのかもしれません)、またグリーンテック分野にほとんど力を入れていないTech Crunchでも採りあげているほど。いずれにしても、業界人ではなく一般人向けの看板報道番組のなかで、このブルーム・エナジーの技術を採りあげるに値するとCBSが判断したことは重要と思えます。
ブルーム・エナジーでは、60ミニッツでのお披露目の余勢をかって、米国時間24日に正式な製品発表を予定しているとのこと。Bloom Boxについては、具体的な仕組みやそれを構成する素材やパテントについてなど、いまのところまださまざまな憶測が飛び交っているようですが、製品発表のなかではこうした疑問に対する答えも出されるのではないでしょうか。
ブルーム・エナジーの技術的優位性や事業の見通しについての詳細は、この製品発表のニュースのなかでお知らせしたいと思います。そして、今日はそのための「ウォームアップ」の意味から、60ミニッツで流れた動画のなかで目に付いた点について少し触れます。
この番組で女性キャスターの取材を受けるのは5人。ブルーム・エナジーCEOのK.R.シュリンダーシュリダー(K.R. Sridhar)、その可能性に大いに期待する側の代表として登場するのが伝説のVCといわれるクライナー・パーキンスのジョン・ドゥーア(John Doer)、それに対して「懐疑派」の専門家として出てくるのがマイケル・カネロス、さらにすでにブルーム・ボックスを導入している企業のなかからイーベイ(eBay)CEOのジョン・ドナホー(John Donahoe)、そうしてこの技術の将来性を裏書きする立場から語るのが、同社の社外取締役を務める前国務長官のコリン・パウエル(余談になりますが、この人選からは、非常にバランスのとれた視点から話題を扱おうとする番組制作者の意思がはっきりと感じられます)
冒頭のキャスターによるナレーションのなかでは、"little power plant in a box"、"wireless"というフレーズが登場します。「家庭の裏庭におけるサイズの小さな発電所」が普及させ、従来の大規模な発電所と送電線網(グリッド)にとってかわるようにしよう、というブルームの意図がここで要約されています。また、その構造変化の比喩として、「かつてのメインフレームが、デスクトップPCやノートPC、携帯端末にとって代わられたように」という説明もあります。つまり、コンピュータの世界で起こったcentralized systemからdistributed systemへの移行を、電力の世界で再現しよう、という(いかにもシリコンバレーの人々が好みそうな?)狙いがあるということになります。
その後、CEOのシュリンダーシュリダーに対してキャスターが「それれほど小さなもので家庭1軒分の電力がまかなえるようになるのですか?」と質問し、シュリンダーシュリダーは手に持った立方体をみせながら、「このサイズが米国の家庭用で、インドなどの新興国ならこれだけで5、6軒分以上をまかなえるでしょう」と答えます。
その後、シュリンダーシュリダーがどうして独自の燃料電池技術開発に乗り出すことになったか、という説明。シュリンダーシュリダーは元NASAの研究者で、もともと宇宙船のなかで使用する酸素の生成用に開発された技術を転用して、電気をつくりだせる仕組みをつくることになった、という説明があります。
このシュリンダーシュリダーを初期から支援するジョン・ドゥーアが次に登場します。ネットスケープ、アマゾン、グーグルを支援したこのVCが、シュリンダーと2001年秋に始めて話をした時に、実現までに必要なコストとして「1億ドル($100 million)以上かかるといわれた」と話していますが、以前のエントリーにあるように、実際には現在までにすでに3億5000万〜4億ドルもの資金が注ぎ込まれているとの報道もあります(番組中では4億ドルという数字が出ています)。ドゥーアはそれだけのリターンを期待できる投資先としてブルームの技術の潜在力を買っていることがここからわかります。
さらに、「この技術が既存の電力会社にとって脅威となりませんか」という質問に対し、「電力会社はこれをソリューションとみなすでしょう。ブルームボックスを買って各地域の変電所に設置し、発電した電気を家庭に売ればいいのだから」と答えています。送配電網が脆弱な米国では、この点はとくに魅力的と映るのかも知れません。
それに対して、懐疑派として登場したカネロスは、「ブルームの技術にはすごく期待しているけど、それでも(うまくいくかについては)懐疑的だ」とし、その理由として「燃料電池のアイデアは1830年代からあるもので、これまでいろんな試みがなされてきたが、まだ成功したものはない(それが難しいことの証拠だ)」といった旨のコメントをしています。
さらに後の部分でカネロスは、事業の将来性について「こうした技術を実用化できたとしても、それを(現在のプロトタイプ的なものの製作)から量産の段階に持っていけるかどうかがひとつの大きな分かれ目で、それができないと価格も下がらないので普及しない。そして、量産ならGEやSiemensといった巨大企業のほうに分がある」とし、キャスターの「10年後、わたしたちの家に燃料電池がある可能性は?」との質問に対し、「ざっと20%。ただし、そのメーカーはGEかもしれない」と答えています。
次に、ブルームボックスを試験導入している一部の企業についての事例の話。
既存顧客リストには、フェデックス(Fedex)、グーグル(Google)、イーベイ(eBay)、大手小売チェーンのウォルマート(Walmart)、ステイプルズ(Staples)など、誰でも知っていそうな有力企業の名前が並んでいます。なお、第一号機の納入先はグーグルだそうで、同社では現在400キロワットの電力をブルームボックスからつくれるようになっているとのこと。
またフェデックスの箇所で、顧客の購入コストの話に触れ、連邦政府の助成金とカリフォルニア州の助成金を合わせると、売価のほぼ半分程度で購入できる、との実状も伝えています。
そして「顧客の声」として取材を受けたイーベイでは、ブルームボックス(燃料にはバイオガスを利用)で本社全体の電力消費の約15%をまかなっているが、すでに年間10万ドル以上の節約に成功。ブルームボックスの発電能力は高く、社屋屋上に敷き詰めた3000枚のソーラーパネルよりも多いとのこと。
最後のほうで、ブルーム・エナジーのシュリンダーシュリダーは「いずれは家庭向けの製品を3000ドル以下で売り出したい」といっています。
いずれにしても、今晩に予定される発表には大いに注目です。
[文責:坂和敏]
関連情報:
The Bloom Box: An Energy Breakthrough?(CBS News: テキスト)
Is Bloom Energy’s Secret Ingredient Zirconia?
Video: The Bloom Box Lands, and the Unanswered Questions Are…
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燃料電池革命? Google、eBay等がテスト中のBloom Energyがいよいよお披露目へ(Tech Crunch Japan)
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