木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

ケータイオタク論

2007年10月 9日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

これまで数回に渡って、ちょっと堅くて重い話題が続いたので、今回は息抜き的なお話をさせていただきたい。

何を隠そう、私は典型的な「ケータイオタク」なのである。とにかくケータイが好きでたまらない。振り返れば大学生時代であった'80年代後半に、自動車電話・携帯電話というものに魅せられハマっていった。当時自動車電話・携帯電話といえば、VIPを象徴する持ち物であった。さらに1989年に、日本移動通信(IDO、現在のau)が開業した。電話はNTTが独占していた時代に、NCC(新電電)が誕生し、さらに自動車電話業界にも参入を果たし、VIP向けのサービスがちょっとだけ庶民に近づいてきた。これが嬉しくてIDOの自動車電話を入手して以来、ひたすらケータイサービスの動向を追うようになった。さらに社会人になってからはケータイを大人買い(?)するようになり、気がつけば1000台を超えるケータイコレクションの山を築くことになった。

さて、わが国で1億契約以上もケータイ(含・PHS)が普及しているわけなのだから、私同様にケータイを愛してやまない人が他にいても何らおかしくない。じつは古くはパソコン通信時代から、こういった「ケータイオタク」は日本中に多数存在し、その輪を広げてきた。そして常にネットワーク上で情報交換をしながら、時には「オフ会」(off-line meeting、ネットワーク上の「オンライン」に対し、現実世界を「オフライン」としてこう呼ぶ)と呼ばれる宴会を繰り広げ、親交を深めてきた。 私もかつて、全国のオフ会に参加してみたり、自分で幹事として仕切っていたこともしばしばあったが、「ケータイの仕事」が本業になってしまってからは、ちょっと足が遠のいていた。

ちょうど先週は、千葉県の幕張メッセにて、CEATEC JAPAN 2007というイベントが開催されていた。ケータイに関連する出展も多く、日本全国からいわゆるケータイオタクな皆様も参集する。そこでCEATEC開催最終日であった10月6日に、都内某所にてオフ会が開催され、私も久しぶりに参加してきた。

まず「ケータイオタク」という表現についてあらかじめ断っておきたい。よく「ケータイマニア」と表現されることもあるが、「オタク」と「マニア」は別格である。「マニア」は単に好きな人のこと。一方の「オタク」は、その道を極めた専門家の意が強い。なので「オタク」というのは私たちにとって誇りある称号なのである。(当日のオフ会参加者にも「オタク」の表現の使用について快諾を頂いた)

今回のオフ会に集われた方々は、東京、名古屋、大阪などから計20名弱。大多数の方は以前から存じ上げていたが、10年ぶりぐらいにお会いする方々も多数いらっしゃって、本当に懐かしい同窓会のような気分を味わえた(お互い、歳をとりましたよね…)。

ケータイオタクにも色々なタイプがある。私のようなコレクターも結構たくさんいらっしゃるし、電話番号に執念を燃やす方々も少なくない。たとえば良番と呼ばれるゾロ目などの電話番号を収集している方など。また今回のオフ会にもいらっしゃっていたダガヤ氏は、10年以上に渡って全国の電話番号の割り当てを調査されている。たとえばケータイ電話番号090-CDE-XXXXXのCDEの部分は、通信事業者別に総務省から割り当てられる。このCDEコードと呼ばれるものを全国の有志からの情報を元に、データベース化されている。MNPでやや形骸化してしまった電話番号だが、貴重なデータベースである。その後総務省もCDEコードを公表するようになったが、割当先の通信事業社内で振り分け変更などがあるケースもあり、生の番号割り当て情報をDB化したダガヤ氏のサイトのほうが、正確なのである。

また、ケータイ片手に全国を放浪するオタクも多い。中には「日本の最果て」まで飛んで行き、隣国の電波を掴んで慶ぶ同士も少なくない。たとえば与那国島まで行けば台湾のGSM方式の電波が届くという。日本に居ながら通話明細に台湾の発着信履歴を残せる。

こんな形で、ケータイの楽しみ方は幅が広いのである。

071008-2.jpg
恒例の記念撮影は…、端末の集合写真となる。その昔は1人10個はケータイを持参してたりしたので、人数の10倍ぐらいの端末の山が築けたが… 最近は端末は少なめです。

ところで、こういったケータイオタクのオフ会に多数参加してきて、ある法則を見出すことができた。まずケータイオタクの大多数が「鉄道オタク」であったこと。ケータイオタクのうち、およそ6~7割がいわゆる「鉄チャン」であることに気がついた。(じつは私もその昔は「鉄チャン」だった)

なぜ「鉄チャン」なのか? 鉄道というのは、全国に鉄道会社があり、その鉄道路線網の上に車両が走っている。ケータイも同様に、全国に通信事業者があり、そのネットワーク上に端末が稼動している。どうもこのあたりが鉄道とケータイの共通点なのである。したがって、鉄チャン出身のケータイの楽しみ方も幅が広い。コレクションする方もいれば、全国放浪するのが好きな方も多い。

そして、一部「鉄チャン」とかぶる方も多いのだが、約4割が「無線オタク」ご出身。その昔ハム無線やっていたとか、無線機の収集が好きだったとか、そういった方がそれなりにいらっしゃる。そして「自動車オタク」も2割程度存在する。自動車の最高級のアクセサリーとして自動車電話にハマったとか、移動しながらの通信機能としてケータイのネットワークにハマって行った方々なのである。

そして、それぞれの出身元のご趣味によって、ケータイの偏愛傾向にも特性があるように見受けられた。以下の図に示すとおり、鉄道系出身も幅が広いが、鉄道の何が好きだったかによって行動も随分と変わってくる。鉄道車両が好きだった方々は(私も含め)、ケータイ端末をこよなく愛する。したがって、購入時の状態を最大限保つように使用する。中には「保存用」の端末を別途購入する人もいるぐらいだ。一方で、ケータイに色々なアクセサリーをつけたり、道具としての使用感が出るまでヘビーに端末を鍛えられているのが「無線系」な方々の端末である。

また鉄道は鉄道でも、旅行がお好きな方々は、現在でもアクティブに行動されている。こういった方々は、たとえば札幌や福岡といった地方のカメラ量販店の棚の配列までも熟知していらっしゃる。また、この方々の派生として「航空系オタク」も存在する。とにかく毎週末は飛行機に搭乗され、マイルを貯められている。これら行動特性と端末状態を出身別に分布させたのが以下の図である。


(図)ケータイオタクの出身別行動特性(木暮祐一のオリジナル)

071008-1.jpg
これは「鉄道(車両)系」ご出身の端末たち。ご覧のとおり、初期出荷時のバーコードなどのシールもはがさずに使うのが基本となる。

たいていのケータイオタクは、いわばアキバ系の風体に通じるものがある(失礼!)。私もそうだが、服装にはそれほど気を使わないのが基本だ。ところが、ケータイオタクの中にごく少数、ちょっと雰囲気が違う面々がいらっしゃるのが気になっていた。鉄道も興味なければ、無線や旅行にも関心がない。そういった方は決まって、大変「お洒落」なのである。ブランド物の洋服やバッグをさり気なく身につけられ、この集団(?)の中で異彩を放つのである。

この少数派がどういう特性の方なのか随分悩んできたのだが、じつは六本木ヒルズの某企業に勤めているときにその派閥を知ることができた。いわゆるIT系企業の社長をはじめとする方々が、じつは結構「ケータイオタク」なのだ。なぜケータイが好きになったのかをヒアリングしていくと、どうも夜の社交の場での話題にケータイネタは事欠かなく、このため常に最新機種を使って注目を引く(ホステスさんから?)のだそうである。そうこうしているうちに、ケータイ関連ビジネスを次々に興されたりしているのだとか…(真偽は定かであはありません)。一応、ケータイオタク分類上は「社交派」とさせていただいた(笑)。

さて、こういったヘビーユーザーの生の声は貴重な情報源である。私もこういった仲間たちからの情報を元に知識を広めていき、気がつけば記事を書かせていただくような立場になった。最近は業界動向を追うのに業界側の関係者の話を聞く機会はずいぶん増えたのだが、たまには原点に戻って、こういった大切な仲間たちと親交を深めることは大変重要なことであると再認識した。オフ会に集ってくる面々は、1人でケータイ5~10契約は当たり前、その電話代を自腹で払い、使い倒しているのである。まさにユーザーの鏡である。ケータイサービスをどのユーザーよりも熟知している人たちである。こういった方々の考え方や意見の代弁者として、引き続き社会に働きかけていこうと再認識した次第である。
 では皆さん、またオフ会しましょう!

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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