第28回 気調ハウス訪問 ~松下エコシステムズ探訪記(5)~

松下エコシステムズの敷地内にある一軒家。こちらは「気調ハウス」と呼ばれているショウルームだ。同ハウスの室内を廣石和明お客様支援グループ・GM(グループマネージャー)に案内していただいた。廣石GMは、社内で「換気博士」とも呼ばれる換気の専門家なのだ。

当日屋外は、あいにくの曇天で肌寒かったのだが、ドアを開けて玄関に入ると、そこはもう温かく快適な空間だった。

春日井工場の敷地内にある一軒家の気調ハウス。

気調ハウスの室内は、24時間全室冷暖房換気が行われていて、設定温度が21度、湿度が48%に保たれている、という。だからこそ、日の射さない玄関から快適に感じたのだ。そして、この気調ハウスは、24時間空調の効果を最大限に引き出すために、寒冷地(東北・北海道)レベルの高気密高断熱設計になっているそうだ。

玄関から、他の部屋に入っても、どこも変わらず暖かい。この快適な空間は、家全体の空調を一手に管理している空調システムのおかげだ。その本体は、バスルームの天井裏に設置されている。天井が透明になっていて、設置されている空調システムを見ることもできた。そして、室内の温度・湿度がどのような状態なのかは、リビングのデジタル掲示板に表示されている。

バスルームの天井に設置された換気システムの本体。

リビングに設置されている電光掲示板。

室内はスリッパを履かなくても床が温かい。特に床暖房機能が備えられているわけでもないのに、ほんわりと温かいのには、ほんとうに驚いた。それにしても全室24時間換気となると電気代も馬鹿にならないのでは?

「快適性を肌で感じていただくためにスリッパは用意しておりません」の文字。

「高気密高断熱住宅なら、熱が外にほとんど逃げません。そのため、建物全体の温度を上下させるのに比べて、室内の空気の温度を上下させるのは、はるかに少ないエネルギーで済むんですよ。さらに、室内外の換気も、『熱交換器』によって、エネルギーロスを少なくしています。熱交換器というのは、暖気と冷気の入れ替え時に暖気の熱を冷気に転化するシステムで、『熱交換素子』を用いて、給気と排気を交差させながら熱を移すんです。このシステムで換気と冷暖房を24時間行っているのですが、スイッチを入れたり切ったりして温め直したり冷やし直したりするより、かえって電気代もお得なんです」

押し入れの天井から屋根裏も見学可能。天井には断熱材が厚く敷かれていた。

また、リビングの天井には、実験用の換気設備などいくつも設置されていた。気調ハウスはショウルームとしての役割のほかに、実験設備の役割も担っている。リビングのみならず、二階の和室や洋室等各部屋にも換気設備は複数備え付けられていたが、その多くは実験用で、商品化の前に実際の住環境に近い気調ハウスで性能チェックをおこなっているのだそうだ。

天井にはいくつもの換気口がついている。

「換気の役割には歴史的な変遷があります。もともとは内部に居る人間が呼吸を続けるために換気が必要でした。1950年に制定された建築基準法でも、換気と採光のための開口部の設置が義務づけられています。そして、公団住宅が普及しはじめた1950年代後半には、台所や浴室等局所換気の必要性が生じ、台所やトイレや浴室に換気扇が設置され始めます。弊社も、1958年に初めて公団住宅向けの換気扇を商品化しました。

続いて、高気密住宅が普及し始めた1980年代からは、結露対策のために換気が要請されるようになります。さらに1990年代以降は、シックハウス対策としても換気の重要性が注目を集めるようになりました」

今後は花粉や粉塵等が混ざった外気を、いかにきれいにして室内に取り込むかが重要になってくると廣石さんは語る。2003年に改正された建築基準法では、新築される住宅は24時間換気を行わなければならないと定められたそうだ。住宅の進化に伴って、求められる換気の役割は変化し、そしてその重要性はどんどん増している。今回、気調ハウスを見学させていただき、廣石さんからお話をうかがったことで、住まいや暮らしをより快適にするために換気が果たしているいくつもの役割を知り、改めて驚かされた。

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24時間換気は住む人も財布もホッとさせる

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プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。

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