高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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曽利文彦監督の最新作『TO』、一夜限りの劇場公開

2009年10月16日

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(C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『ピンポン』『ベクシル 2077日本鎖国』『ICHI』などで知られる曽利文彦監督の最新作『TO(トゥー)』は、星野之宣によるSF漫画『2001夜物語』を原作とする“3Dライブアニメ”(モーションキャプチャと、3DCGを2Dのセルアニメ風の画像に変換するソフトウェア技術「トゥーンレンダリング」を組み合わせたアニメ)で、原作の第2巻に収録された『楕円軌道』と『共生惑星』のエピソードをそれぞれ映像化。オリジナルビデオアニメとしてまずDVDレンタルを10月2日から開始し、12月18日からBlu-ray Disc版とDVDを発売するという展開だが、多数ファンからの劇場公開の要望に応え、10月16日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで一夜限りの上映を行なうことになった。

Sori%26Arias_talk.jpg会場では上映に先立ち、曽利監督と『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアス監督によるトークショーが実施された。前半では、ジェームズ・キャメロン監督の映画でスタッフとして働いたことがある、松本大洋の漫画を原作とする映画を監督しているといった2人の共通点や、互いの交流が語られた。後半で本作についての話題になり、曽利監督は「大学生の時に原作を読んでから、いつかは映像化したみたいと夢見ていた」「『ベクシル』と同じくモーションキャプチャは使っているが、フェイシャルキャプチャは今回は使わず、顔の表情はアニメーターに絵付けしてもらった」「日本のセルアニメは完成されていて素晴らしいし、ハリウッドの実写アクション大作を模倣しても仕方ない。自分は3Dライブアニメで独自のジャンルを開拓し、オリジナリティーを確立していきたい」と話していた。

続いて本編の上映。『楕円軌道』では、まず宇宙ステーション「ミッドナイトバズーカ」が原作のデザインを踏襲しながらも、巨大な構造物の質感と無数にちりばめられた多色のイルミネーションの緻密さ、美しさに目を奪われる。また、テロリストたちが着用するバトルスーツのメタリックな表現やバイザーの透明感なども、実写として十分通用するほどクオリティーが高い。

『共生惑星』では、雪のような菌類で覆われた惑星の地表の幻想的な景観が美しく、菌の胞子が「宿主」から噴き出すさまも微粒子の一粒ずつが命を持っているかのように繊細に描かれている。また、後半のサスペンスを盛り上げる爆撃機の黒光りする機体の質感、原作にないミサイル発射準備のマニアックな描写もいい。

いずれのエピソードでも、ドラマとアクション、静と動の配分が絶妙で、原作のハードSFの要素や宇宙時代の人間性のあり方といったテーマを尊重しつつも、エンターテインメントとしての魅力を獲得しているように思う。細かい点で難を言えば、室内や通路などに複数キャラクターがいるショットで、光源とキャラの位置関係とシェード(影)の付け方に整合が取れていない描写がいくつか見受けられた。とはいえ、宇宙船やバトルスーツ、宇宙空間や地球など美しいCGが満載で、原作のファンやアニメファンだけでなく、映像マニアにもぜひ観てほしい作品だ。

[作品情報]
スタッフ
■原作:星野之宣「2001夜物語」(双葉社刊) ■監督:曽利文彦 ■CGスーパーバイザー:宮崎浩和 ■音楽:高橋哲也 ■サウンドデザイン:笠松広司 ■制作スタジオ:OXYBOT
キャスト
■ダン:大塚明夫 ■マリア:朴璐美
■イオン:福山 潤 ■アリーナ:平野 綾 ほか
■DVDレンタル開始日:2009年10月2日
■Blu-ray&DVD発売日:2009年12月18日
■ホームページ:http://mv.avex.jp/to/


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プロフィール

1964年生まれ。翻訳者、ライター。訳書に「熱帯アジアの海の生物」「Family Crests of Japan」、注釈協力に宮沢章夫著「『資本論』も読む」ほか。数年前からホームシアターにはまり、仕事場兼用の六畳間に100インチスクリーンとプロジェクター、7.1chサラウンドスピーカーなどを無理矢理入れて、映画や音楽、サッカーを日々楽しむ。

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