歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」

ドラスティックに変化し続ける広告経済とネットの関わりを読み解く

矛盾に満ちたクリック課金型広告

2008年4月28日

(これまでの 歌田明弘の「ネットと広告経済の行方」はこちら

 1か月ほど前のことになるが、筆者の書いた文章を読まれた作家の大石英司氏からメールをいただいた。
 大石氏がまぐまぐの有料版で広告のクリックを呼びかけたところ、それは規約に反すると停止され報酬も没収になったとのことだった。「広告をクリックしてください」というのは、広告主に貢献できる自然な行為だし、「クリックを呼びかけるな」ということにはたして社会的合理性があるのかと主張されていた。
 大石氏のメールでも、「クリック型広告のクリックを呼び掛けるのが禁止だというのは常識ではないか?」という読者もいたと書かれていたが、ネット広告関係者のあいだでは、次のような理屈で、こうしたことは常識の部類に属することなのだろう。

 クリック課金型広告では広告主はクリックされるたびに広告料を支払わなければならない。だから、広告主は、売り上げなどの成果につながらないクリックをされたくはない。まぐまぐでもGoogleでも広告を運営している会社は、広告主を満足させる(もしくは不満を抱かせない)ためには、役に立たないクリックを減らしてコンバージョン・レイト(広告目的達成率)をあげる必要がある。そのためこうした規約を設けているわけだ。

 しかし、「クリックを呼びかけるな」というネット広告会社の規約は、大石氏も言われるとおり、矛盾に満ちたものだ。

 ネット広告会社は、役に立たないクリックを減らしたいといっても、クリックしてもらわなければ話にはならない。まったくクリックされなければ、クリック型広告の意味はない。だから、クリックはしてほしい。そうかといって、広告に惹かれてではなくて、サイト運営者などの呼びかけに答えて利用者にむやみにクリックされるのも困る。ネット広告会社の立場はこのようなものだ。
 ネット広告会社も広告主も、サイト運営者などの呼びかけに答えてクリックされるのは困るといっても、そうしてアクセスした利用者が広告主のサイトを見て、商品の購買や会員登録など広告目的を達成する行動をとることもありえないわけではない。しかし、「クリックを呼びかけるな」という規則は、こうした顧客を排除してしまう。
 つまりクリック課金型広告というのは、アクセスをできるだけ増やそうという広告ではなくて、成果達成率の高そうな顧客にかぎってアクセスしてもらおうという排除性の強い広告である。

 こうした方法によって、クリック課金型広告は「広告効果がわかる」とか「広告効果が高い」といった評価を獲得してきたわけだが、素朴に考えて、広告主にとってこれがもろ手をあげて望ましいことなのかどうか。

 本来、広告主は、自分のところの商品に強い興味がある人ばかりではなくて、それほど興味がない人も含めてできるだけ多くの人にアクセスし、商品について知ってもらいたいはずだ。リアルな店舗の接客では、「買う見こみの少ない顧客に販売員が時間をとられるのはありがたいことではない」という考えはありうるかもしれない。しかし、ネットの場合は、冷やかし半分の人にアクセスされても、さしてコストが発生するわけではない。
 広告の成果を見こみやすい顧客だけにアクセスを絞ってしまおうというクリック課金型広告は、販売ツールとしてのサイトのこうした特徴にはあっていない。そういう意味で、クリック課金型広告は矛盾に満ちたものである。

 言うまでもないが、これまで書いてきた成果報酬型(CPA)広告ならば、「クリックを呼びかけるな」などという規則は不要である。広告に興味を持った人も、また作家の熱心なファンで、書き手の呼びかけに答えたいだけの人もクリックして、広告主のサイトにアクセスしてもらうことができる。

 私は、クリック課金型広告に恨みがあるわけではないが、理屈から言って、この広告モデルにはかなり無理があるのではないかと思い、何回かそれについて書いてきた。
 次回からは、将来的には最重要の広告分野のひとつになると思われる動画広告についてとりあげたい。

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プロフィール

『ユリイカ』編集長をへて1993年より執筆活動。著書に『ネットはテレビをどう呑みこむのか』、『科学大国アメリカは原爆投下によって生まれた』、『「ネットの未来」探検ガイド』、『インターネットは未来を変えるか』、『本の未来はどうなるか』など。大学でメディア論などの授業もしている。週刊アスキーで「仮想報道」を連載。アーカイブはこちら 歌田明弘の「地球村の事件簿」

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