「エタノール燃料にも大気汚染問題」研究者が指摘
2007年6月 6日
Brandon Keim
エタノール燃料は化石燃料に比べて環境には優しいが、人の健康には同程度に悪影響を及ぼす、ということがスタンフォード大学の研究で明らかになった。
大気科学が専門のMark Jacobson准教授は、エタノール燃料の自動車が広く普及していると考えられる2020年の大気環境についてシミュレーションを行ない、米国内の自動車がガソリンを燃料とする場合と、エタノールを燃料とする場合、それぞれの大気汚染の度合いを比較した。
以下はスタンフォード大学の広報資料「研究報告:エタノール燃料でも人の健康に有意の悪影響」から引用する。
「われわれの研究で明らかになったところによると、自動車が『E85』(エタノールを85%含有する燃料)を燃料とする場合に、2種の発ガン性物質――ベンゼンとブタジエン――の大気中濃度は低減するが、別の2種――ホルムアルデヒドとアセトアルデヒド――の濃度は逆に高くなる」と、Jacobson准教授は言う。「その結果、E85使用の場合のガンの発症率は、ガソリン使用の場合と似たようなものになるだろう。だが米国の一部地域では、スモッグの主成分であるオゾンが、E85の使用によって有意に増えるだろう」(中略)
「全米で見ると、E85の使用によって喘息関連での緊急外来の受診件数は年770件のペースで増え、呼吸器系疾患での入院も990件増えると考えられる。ロサンゼルスだけでも2020年には[現在より]入院件数が650件増え、喘息関連の緊急外来受診は1200件増えると予測される」とJacobson准教授は指摘した。
関係する全人口を考えると、これらの数値は決して大きくはない。だがそれは問題ではないとJacobson准教授は言う。
「問題は、健康上の利点がないとすれば、なぜエタノールなどのバイオ燃料の採用促進を続けるのかということだ」
「他の選択肢もある。たとえばバッテリー駆動の『プラグイン・ハイブリッド車』(PHEV:充電可能なハイブリッド車)とか、水素燃料電池車とか。これらは風力や太陽光発電から動力を得られる。これらの車両は有害物質や温室効果ガスを事実上一切排出しないし、土地の利用方法にもほとんど影響を及ぼさない。これに対してエタノールはトウモロコシやスイッチグラス[ロッキー山脈に自生する多年生植物]を原料に作られるため、量産には広大な農地が必要となる。だから、気候や健康、エネルギーといった問題に対処するには、すでに利点の明らかな技術を利用するのが賢明に思える」と、Jacobson准教授は続けた。
Photo: Jeffrey Beal
[日本語版:ガリレオ-江藤千夏/小林理子]
Wired Science
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