yomoyomoの「情報共有の未来」

内外の最新動向をチェックしながら、情報共有によるコンテンツの未来を探る。

子供たちに「Wikiリテラシー」を習得させることは可能か

2008年12月10日

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少し前に『Wiki Writing: Collaborative Learning in the College Classroom』という本が刊行されたのを知りました。版元のミシガン大学のページを見ると、著者は Wiki と言えば Wikipedia ばかりが引き合いに出される現状に不満をもっており、大学で Wiki を利用した共同作業的な学習環境を実現するために本書は書かれたようです。

ここで少し横道にそれますが、ブログや Wiki やポッドキャストといった、いわゆる Web 2.0 ツールを教育に活かすことを目指す本がアメリカではいくつも出ており、ワタシが知るだけでも以下の4冊があります。

日本でもこうした本はあるのかもしれませんが、教育現場で有効にブログや Wiki といったツールが主体的に活用されてる話を聞かないのは残念です。

話を戻してワタシが『Wiki Writing』に特に興味を持ったのは、Wiki にフォーカスした書名もありますが、前述の著者の狙いに共感するからです。

学生にレポートを課すと Wikipedia の記述を鵜呑みにして……といった話をときどき聞きますが、Wikipedia という不完全ではあるが巨大な知の集積は子供たちにとってもはや前提であり、その存在を踏まえた上で教育を考えなければならないでしょう。ただそれが現在の形まで成長する過程を知らず、最初に出会う Wiki が Wikipedia というのは少し心配になります。

『ウィキノミクス』で知られるドン・タプスコットが、約10年前に著した『Growing Up Digital』(邦訳『デジタルチルドレン』)の続編となる『Grown Up Digital: How the Net Generation Is Changing Your World』サポートサイト)を刊行しています。

『Grown Up Digital』は先月 NHK で放送された「デジタルネイティブ」の元ネタである『Born Digital: Understanding the First Generation of Digital Natives』と近い内容の本だと想像できますが、著者のタプスコットの「GoogleやWikipediaなどでいつでも簡単に入手できる情報を、わざわざ暗記するのは時間の無駄」という教育についての発言が話題になりました。

確かにネット世代である今の子供たちにとって「技術は空気」のようなものかもしれません。ただタプスコットの発言の意図とずれるものの、Wikipedia を固定的な存在ととらえてないかというのがちょっと気になりました。

はじめから Wikipedia がありきなのはよいとしても、当然ながら Wikipedia は木になってできたものではありません。ユーザ自身が自発的にその内容の改善と拡充を行なってこそ意味があるものです。それを「はじめからありき」な世代が担えるのか。

そうした意味で、ワタシは学校で早くから Wiki を使った共同作業的なライティング、ここで勝手に造語させてもらえれば「Wikiリテラシー」を学ばせられないものかと考えることがあります。

ワタシが考えるのは二段階で、まずは個人用の Wiki でその人にとってのストック情報の編集を学ぶ段階、そしてクラスなどメンバー同士を知った環境でその集団にとって有益な情報をまとめていく段階からなります。

ブログに代表されるフロー情報のパブリッシングは割と子供たちにもなじみやすいのではないかと思いますが、自分にとって意味のあるトピックについて自分の言葉で情報をまとめていくのは日記を書くのより難しいでしょう。そして、それができるようになったら、比較的小規模のグループ内で共同作業によるライティングを実践し、そこで他者とお互いが所属するコミュニティにとって共有すべき情報をまとめる技術を学ぶのです。

それらの段階を踏めば、Wikipedia との向き合い方も変わるでしょうし、その能動的な参加者になることが期待できます。何よりそうした「Wikiリテラシー」は、Wiki そのものでなくてもライティングの技術として有益なものだとワタシは考えます。

このアイデアどうでしょう? 非現実的でしょうか?

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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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