yomoyomoの「情報共有の未来」

内外の最新動向をチェックしながら、情報共有によるコンテンツの未来を探る。

Sensorwareふたたび

2009年5月14日

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WIRED VISION が主催する連続トークセッション「コミュニケーションデザインの未来」第3回(5月21日)のお題は『上陸間近! グーグル・Androidが携帯とクラウドをどう変えるか?』で、ユーザインタフェース研究の第一人者にして発言小町愛好家の増井俊之慶應義塾大学環境情報学部教授が登壇されるとあって過去の回以上に興味をそそられるのですが、田舎に隠棲するワタシは例によって参加できないのが残念です(せめて金曜日開催だったら……)。

以前「正念場を迎えるオライリーとEtech 2009」を書いたときに、Etech のセッション概要にやたらと「センサー(sensor)」という単語が目につくのが気になったのですが、小林祐一郎さんのブログを経由して「センサークラウド」という言葉に行き当たり、なるほどと思いました。

サーバーサイドのクラウドコンピューティングから、次はクライアントサイド、それもいままでのクライアントという範疇を通り越して、さらにさらに粒度が小さいセンサーレベルのクラウドコンピューティング時代が始まろうとしている。

実際 Etech 2009 でも、携帯電話の通信データを分析して都市における人間の動きをリアルタイムに視覚化する Wikicity プロジェクトが話題になってましたが、「センサークラウド」という切り口で見れば、Google が Android という携帯プラットフォームを、そのクラウドコンピューティング戦略における「クライアントサイドのセンサー」に位置づけていると考えられます。

そういえば日経 ITPro が「Web2.0の次はコレ!」という掛け声(気が早いこった!)とともに「ライフログ・サミット2009」を開催していますが、ライフログの活用もセンサーレベルのデータ収集と、その大量なデータを引き受けるクラウドが揃って本格化するものなのでしょう。

広義のライフログを考える上で Twitter の話を欠かすことはできません。ここしばらく何度目かの大ブレイク期にある Twitter ですが、創業者たちがサービス立ち上げ時にどこまで自覚的だったかはともかく、(そのマッシュアップサービスを併せ)Twitter が押し進めるネットサービスのリアルタイム化は、ソーシャルネットワークサービスのセンサー化と言い換えることもできるでしょう。

ライフログの活用を考える場合プライバシーの問題は避けられないわけですが、Twitter のタイムラインを眺めていると情報公開に関するネットユーザの意識の変化を感じます。Google は既に位置情報共有サービス Google Latitude を始めていますが、ブログなどへの位置情報の公開を可能にする機能が最近追加されました。自分の位置情報をリアルタイムに特に制限なく公開したいという需要があったからでしょう。

もちろんこの流れに違和感を覚える向きは確実にあるでしょう。例えばワタシ自身がそうですし、前述の Wikicity プロジェクトに対しても、適切なフィードバックのない垂れ流しでは「情報ポルノ(info-porn)」に過ぎないという批判があります。

今後はセンサークラウド時代におけるソーシャルデータ、ライフログのプライバシーに配慮した活用のあり方が議論されると思いますが、一つ参考例として W3C のワークショップで発表された Integrating Social Networks and Sensor Networks という論文を挙げておきます。ティム・バーナーズ=リーがかつて提唱した Giant Global Graph を久しぶりに見ましたが、W3C 的には「グラフ」にセキュリティポリシーを噛ませるモデルを考えているようです。

今から6年以上前、ワタシは非接触型IC、無線タグ(RFID)、IPv6 の組み合わせによるインターネットをオーバーレイするサービスを夢想し、これからはソフトウェア、ハードウェアといったくくりではなく「Sensorware」の時代になるのではないかと風呂敷を広げたことがあります。

ICカードはともかく、当時期待したようには RFID は遍在化しませんでしたし、IPv6 も今なお「はじまりの終わり」が見えない状態でワタシの見立ては見事に外れたわけですが、携帯電話をはじめとするセンサー、Twitter などのソーシャルネットワークサービス、そして巨大なデータを捌くクラウドが揃った現在、当時とはまた違った意味で「Sensorware」の時代を今一度夢想したくなります。

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プロフィール

1973年生まれ。 ウェブサイトにおいて雑文書き、翻訳者として活動中。その鋭い視点での良質な論評に定評がある。訳書に『デジタル音楽の行方』、『Wiki Way』、『ウェブログ・ハンドブック』がある。

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