Chris Kohler 2007年08月08日

7月中旬に『E3』会場で行なわれたこのインタビューは、もしかするとゲーム業界が最も待ち望んでいたものかもしれない。相手は任天堂のゲーム開発を指揮する宮本茂氏。

私はこの5年間で宮本氏に話を聞く機会が何度かあったが、すべてのインタビューが意義深いものだった。

規模を縮小した今年のE3にあっては、宮本氏としても話す材料はそれほどなかった。しかし、開発中の『Wii Fit』や『スーパーマリオギャラクシー』のゲームデザインについて語る彼の言葉は必読に値する。

巨大な開けた3D空間ではなく、球体や惑星の上でプレイすることの最大のメリットは、自分がやっていることを常に見る上で、カメラがあまり問題にならないことです。3D空間での操作に苦労している人には、ぐんとプレイが簡単になります。

インタビューの全文を以下に掲載する。

ワイアード・ニュース(以下WN):私はさっきまで『スーパーマリオギャラクシー』をプレイしていたのですが、2人プレイモードがとても面白いと思いました。あのアイディアはどこから?

宮本茂氏(以下敬称略):きっかけの1つは、『スーパーマリオ64』以降、マリオシリーズが3Dに移行したせいで、プレイに手こずる人が増えたと感じていたことです。だから今回は、誰もがプレイできるマリオのゲームをなんとしても作りたかったのですが、やはり3Dの要素も取り入れたいと思いました。そこからアイディアが生まれたわけです。

それにマリオの場合、プレイしている隣に誰かが座っていると、決まって「違うよ、こっちだって、ほら、あれを見ないと」などと指示しています。そこで、『Wii』のリモコンとポインター機能を使い、ソファーで隣に座っている人たちにとっても、よりインタラクティブなゲームを作れるのではないかと考えました。隣の人がいろいろなものを指してプレイヤーを導くことができるんじゃないかと。

WN:とても興味深い話ですね。というのも、昨年のE3は『ニュー・スーパーマリオブラザーズ』が登場した直後で、あのタイトルが『ニンテンドーDS』向けゲームのベストセラー入りを果たすとは知らなかったわけですから。あの成功によって次作への期待が高まると分かったために、『スーパーマリオギャラクシー』の開発が遅れたのですか?

宮本:いえいえ、全く関係ありません。誰もがプレイできるものにしたいというのは随分前から考えていたことで、その方針は最初から変わりません。

事実、重力を利用するとか、さまざまな惑星の上を走り回るといった核となるアイディアは、『スーパーマリオ64』の直後、『Mario 128』(マリオ128)やデモの『100 Marios』(100マリオズ)といったプロジェクトに取り組んでいたころから実験していました。多くは長い間温めていたアイディアです。

巨大な開けた3D空間ではなく、球体や惑星の上でプレイすることの最大のメリットは、自分がやっていることを常に見る上で、カメラがあまり問題にならないことです。3D空間での操作に苦労している人には、ぐんとプレイが簡単になります。

WN:ほかには何がありますか? 宮本さんの生活の中で今現在、新しくてエキサイティングなものというと。

宮本:これ以外では目下、『Wii Fit』の仕上げを一生懸命やっているところです。

WN:日本では年内に発売予定ということですが。

宮本:そうです。すでに『Wiiバランスボード』[訳注:『Wii Fit』に同梱されるアクセサリーの仮称]の製造を開始しています。

WN:なぜこれを作ろうと思ったのですか?『Wii Sports』はまだビデオゲームらしさがかなり残っていますが、Wii Fitは方向性が違います。

宮本:それは、Wii開発当初の主要コンセプトにまでさかのぼる話です。そもそも、Wiiはリビングルームに置かれるデバイスにする計画で、家中みんなが使えるものにしたいと考えていました。

このコンセプトは、今の『Wiiチャンネル』へとつながっています。Wiiによって、家族の誰もが利用するテレビのチャンネルを増やすというコンセプトです。テレビのチャンネルとして唯一ほかと違うのは、インタラクティブだという点です。

これらのチャンネルが楽しいエンターテインメント体験であれば、家族みんながその前に座って利用できる。つまり、Wiiは必ずしもぶっ続けで何時間もプレイしなくてはいけないものではなく、毎日少しずつプレイできるデバイスにしたいという考えだったわけです。

そしてそれは、『Wii Fit』の基本アイディアとも大体一致しています。『Wii Fit』は、Wiiのコンセプトに実にぴったり当てはまるものなのです。

毎日3分間だけプレイすることも、ワークアウトのために毎日1時間ずつプレイすることもできますから、少々奇妙な感じもするかもしれません。その意味では、このビデオゲームシステムを通じて、誰もが楽しめる新たな体験を提供しようとしている私たちの試みは、より興味深いものになっています。

(2)へ続く

[日本語版:ガリレオ-緒方 亮/高橋朋子]

WIRED NEWS 原文(English)

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